日日是読日のブログ

本のご紹介、読書日記

これ、いったいどうやったら売れるんですか? 永井孝尚

これ、いったいどうやったら売れるんですか? 身近な疑問からはじめるマーケティング (SB新書)
これ、いったいどうやったら売れるんですか? 身近な疑問からはじめるマーケティング (SB新書)
SBクリエイティブ





今回は、以前本ブログでご紹介させていただいた『100円のコーラを1000円で売る方法』の筆者、永井氏のマーケティング論についての本です!


『100円のコーラを1000円で売る方法』と同様、身近な例を用いて消費者の心理や行動に基づいたマーケティング理論を分かりやすく展開しています。



目次




第1章 腕時計をする人は減っているのに、なぜ腕時計のCMは増えているのか?
第2章 人はベンツを買った後、どうしてのベンツの広告を見てしまうのか
第3章 雪の北海道でマンゴーを育てる?
第4章 あの行列のプリン屋が赤字な理由
第5章 なぜセブンの隣にセブンがあるのか?
第6章 女性の太った財布には、何が入っているのか?
第7章 きゃりーぱみゅぱみゅは、なぜブレイクしたのか?
第8章 古本屋がふつうの本屋よりも儲かる理由




人はベンツを買った後、どうしてベンツの広告を見てしまうのか


認知的不協和の解消


お客さんは高い買い物をした後、「本当にこれを買ってよかったんだろうか?」という不安感に苛まれています。

自分が買った商品が本当に価値のあるものなのか知りたい、確かめたいから広告を見る。

この認知的不協和をなくすために広告を見てしまうのです。

だから、本当の商売の始まりは「売った後」であり、「やっぱり買ってよかった」と思ってもらうために、アフターサービスが非常に重要になってきます。

継続的な客、つまりリピーターやその先のひいき客、ブランド信者につなげていくために販売後の対応が欠かせないのです。




雪の北海道でマンゴーをつくる?


商品開発の目的は、顧客の創造である


みなさんは、十勝マンゴーをご存知でしょうか?

詳しい育成方法などは割愛し、十勝マンゴーの市場における役割を説明したいと思います。

十勝マンゴーは、春や夏に収穫が盛んな宮崎マンゴーが埋められない秋・冬の穴を新規市場として開拓し、冬でもおいしいマンゴーが食べられるようになったことに大きく貢献しました。

実は、この十勝マンゴーは、新規市場の開拓のための商品開発が目的ではなく、その先の顧客の開発にあります。


”企業の目的は、顧客の創造である”    —ドラッガー


実はこの例は、抽象化するとヒット商品というのは、「お客さんが気づかないニーズ」に気づいて商品開発し、顧客を生み出して新規市場の開拓した、と言えます。


口臭予防のリステリンも、「口臭で人間関係を悪くしたくない」という隠れたニーズをヒット商品につなげたと言えます。



お客さんも気づかないニーズというのは、しばしば市場においてはブルーオーシャンであることが多いです。


だから、ここを開拓することが他社との差別化につながります




なぜセブンの隣にセブンがあるのか?



ランチェスター戦略


ランチェスター戦略とは、もともと戦争に勝つ為の戦略で、経営用語に転用され、「弱者の戦略」と「強者の戦略」に分けられます。

イオンとセブンイレブンの例

イオン…強者の戦略
*広域で戦う(全国展開)
*総合力で戦う(豊富な品揃え)
*遠隔戦(大店舗に遠方から集客)

セブン…弱者の戦略
*局地戦に持ち込む(ドミナント方式)
*得意技で戦う(3000品毎日入れ替え)
*接近戦(顧客の生活圏に小店舗)


セブンは、イオンという強敵を相手に真っ向から勝負を仕掛けても勝てないとわかっています。


だから弱者なりの戦略をとることでイオンを自らの土俵に上がらせないことに成功しています。


戦うフィールドを変えてしまうというのはマーケティングにおいては逆転の発想として必要となると思います。



女性の太ったの財布には、何が入っているのか?



はなまるうどんのマーケティング戦略


お昼時、あるうどん屋さんには多くの女性客が列をなしていた。彼女らのお目当ては

「日本全国、どんな店の期限切れクーポンでも、お好きなメニューが50円引き!」

というはなまるうどんのキャンペーンである。一見、はなまるうどん以外のお店のクーポンを使えるようだと、お店にとっては損なように見える。


しかしこれも立派なマーケティング戦略、つまりプロモーションなのです。


当時、はなまるうどんは「健康うどん」を商品の軸にしており、女性客の取り込みが喫緊の課題であった。そこで、女性客の行動を徹底的に分析していた当時の社長は、女性の財布がパンパンに膨れ上がっていることに気づいた。


「あの財布には何が入っているのだろう?」と疑問に思った社長は、女性社員の財布を見せてもらい、期限切れのクーポンがぎっしりと詰まっていることを知った。


そして、「節約が大好きな女性客は、クーポンが切れてしまったことにさぞ悔しがっているだろうから、これを活用しない手はない」と考えた社長が編み出したのがこのキャンペーンなのです。


クーポンが使えなくて悔しがっている女性客は、その段階でははなまるうどんにとっては潜在客見込み客。彼女らを今回のキャンペーンによって新規顧客として取り込み、その先には、健康うどんを知ってもらうことでリピーターひいき客にできるのです。



プロモーションは、目立つだけではダメ


プロモーションには、実は落とし穴があって、「どんどんプロモーションして、目立とう。話題になろう」と考えてしまうと、目立って終わりになってしまう。


プロモーションの目的は、「伝えたい相手に伝えたい内容を伝えること」だ。
だから、そのターゲットに伝わるようにメッセージを発信しなきゃいけない。


はなまるうどんの例でいえば、「健康意識の高い女性」を伝えたい相手として顧客のターゲットにし、彼女らにメッセージを伝えるために「期限切れクーポン大歓迎」というキャンペーンを行った。



マーケティングミックスとは?


商品戦略」「価格戦略」「チャネル戦略」「プロモーション戦略」の4つをマーケティングにおいてはマーケティングミックスと呼んでいます。

マーケティングでは、このマーケティングミックスを組み合わせてターゲットのお客さんに価値を作りだし、伝え、提供していく


はなまるうどんの場合、「健康への意識が高いお客さん」というターゲットに対して商品戦略により「健康うどん」を作り出し、プロモーション戦略価格戦略を組み合わせることで「期限切れクーポン復活祭」というメッセージを伝え、さらにチャネル戦略によって女性が入りやすいカジュアルなお店にして価値を提供しているのです。


このマーケティングミックスがバラバラだと、成果は出ないといいます。


マーケティングミックスをバラバラにしないためには、まずバリュープロポジションを考えないといけません競合他者との差別化を図るために自社の強みや弱みを分析し、どんな商品を売るのかをじっくり考えることが成功のカギとなります。

エッセンシャル思考   グレッグ・マキューン



エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする
エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする
かんき出版





エッセンシャル思考は、より多くの仕事をこなすためのものではなく、やり方を変えるためのものである


エッセンシャル思考


「まーたこういうカタカナ用語に弱い自分はこういう身も蓋もない自己啓発書に吸い寄せられてしまうなぁ」


本書を手に取った時、素直にそう思った。


新聞や広告でこういった類の自己啓発本を目にすることは多いと思います。


ありきたりで抽象的な美辞麗句を書き連ね、読者の危機感を煽る本だってあります。


この本もきっとそんなような本なのかなって思っていました。


だけどそのマイナスな期待は見事にひっくり返されました。


本書のサブタイトル、そして上の引用文からも分かりますように、エッセンシャル思考とは、「より少なく、より良く」を実践するための考え方をまとめたものです。





エッセンシャル思考を図で完結にまとめると、以下のようになります。



「なんでもやる」ではなく、本当に大切な本質的なことだけに全エネルギーを注ぐ


これが、エッセンシャル思考の本質的な部分です。



その「エッセンシャル思考」を章に分けてテーマごとに掘り下げていきます。



エッセンシャル思考とは何か



エッセンシャル思考と非エッセンシャル思考


人はなぜ、方向性を見失うのか?


「○○を始めよう!」「○○になるために××を忘れずにやろう!」


そうやって決心したはずなのに、気づけば三日坊主になってしまった経験は誰しもあると思います。


ではなぜ、そのように意思が続かなかったり、迷いや周囲の目線によって流されてしまうのでしょうか?


 理由① 選択肢が多すぎる
ここ10年ほどで、私たちの選択肢は急激に増えました。そのせいで大事なものが見えなくなってしまったのです。


 理由② 欲張りの時代
テレビCMはあらゆるものを手に入れろと叫び、求人広告は「何でもできる人求む」とある。「全部手に入れよう、全部やろう」という考えが浸透しつつあるのです。



こうした考え方の弊害として、周りに流されて自分に正直に生きられなくなることが挙げられます。



自分に正直に生きるというは、単にわがままになることではありません。不要なことを的確に見定め、排除していくことです。
つまり、やることを減らし、人生をシンプルにして本当に重要なことだけに集中するということでなのです。


本当に重要なことを見極めるには、「自分は今何をすべきか?」「自分は何がしたいのか?」「自分は何が好きなのか?」を明確にする必要があります



そうすると、雑用を切り捨てられるだけでなく、本当に自分が乗るべき誘いを判断できるようにもなります。



選択   —選ぶ力を取り戻す



われわれを人間にするのは選択する能力である。  — マデレイン・レングル(作家)


みなさんは、「学習性無力感」という心理的バイアスをg存知でしょうか?


どのようなものかを説する前に、「学習性無力感」についての面白い実験をご紹介します。



まず、犬を3つのグループに分けます。
1.リードで繋がれ、逃げられない状態で電気ショックを与えられる
2.1と同じ状態だが、パネルを踏むと電気ショックを止められる
3.リードで繋がれただけで、電気ショックは与えられない


3つのグループを、低い障壁で電気ショックゾーンと安全ゾーンで左右に分けられた部屋に連れていく。


面白いことに、2と3のグループは、障壁を飛び越えて安全ゾーンに移ったのですが、1のグループは動こうともしなかった。電気ショックから逃れる方法を探そうともしなかったのです。


小部屋に連れていかれる前になすすべもなく電気ショックを与えられていた1のグループの犬たちは、そこから逃れるという選択肢があることを忘れていた。それまでの経験上、なすすべもないという無力感を植え付けられていたのです。


この犬たちと同様に、人間にも学習性無力感は存在します。
算数の初歩でつまずき、どうやっても解けない問題に苦しんだ子供は算数に対する努力を放棄する。何をしても無駄だと思い込んでしまいます。


他にも、すべてを引き受け、すべて全力で取り組もうとするビジネスマンがいます。
一見、無力感とは縁がなさそうだが、自分から大事な仕事を選ぶというアクションをせず、選択肢を吟味する努力をしない点で無力感に陥っているのです。


エッセンシャル思考

選ぶ力を無駄にしない

自分で選び取る




ノイズ   —大多数のものは無価値である



万物の大半はほとんど価値がなく、ほとんど成果を生まない。
少数のものだけが非常に役立ち、大きな影響力を持つ。    —リチャード・コッチ


時間と成果の関係について


ある種の努力は、ほかの努力よりも効果が大きい


がむしゃらに目の前の仕事に没頭するのではなく、「自分の仕事で、もっとも価値のある成果は何か?」と考え、自分の会社、属する団体にもっとも貢献できることをすれば、少ない時間でより良い成果をもたらせます。


重要な少数は、瑣末な多数に勝る

80対20の法則(パレートの法則)」をご存じでしょうか?
経済学者のヴィルフレド・パレートが提唱した法則で、成果の80%は20%の努力に起因するという説です。


例えば、世界一の投資家ウォーレン・バフェットという方をご存知でしょうか?
彼は、少数の投資先だけに融資し、一度買ったら長い間保有し続けます。そして、彼の資産の9割は、たった10種類の投資によるもの、という驚くべき方です。


彼は、本質的な少数のものだけ(少数の見込みのある株)を選び取り、その他多くのチャンス(多数の不安定な株)にノーと言ったのだ。



エッセンシャル思考

・大多数の物事が不要だと考える

・少数の決定的に大事なものだけを選び取る



トレードオフ   —何かを選ぶことは、何かを捨てること


戦略には、選択とトレードオフがつきものだ。
独自性を意図的に選び取るのである。    —マイケル・ポーター


何かを得るために何かを捨てる、というのがトレードオフを簡潔に言ったものです。


トレードオフが大切なのは分かりますが、私たちがなかなか実行に移せないのは、トレードオフが起こるのは、どちらも捨てがたい選択肢であるとき、であるからです。
高い給料か、長い休暇か。急ぎのメールに返信するか、大事な会議に出席するか。
どちらにもYESと答えたくなる。


そして、
非エッセンシャル思考の人は、「どうすれば両方できるか?」と考え、
エッセンシャル思考の人は、「どれを引き受けるか?」と考えます。


また、トレードオフは痛みを伴いますが、絶好のチャンスでもあります。


選択肢を比較検討する中で、自分の本当の望みが分かるからです。



エッセンシャル思考

・何を取り、何を捨てるか?

・何に全力を注ぐか?



見極める技術


多数の瑣末なものから、少数の重要なことを見分ける


選抜   —もっとも厳しい基準で決める


内的なプロセスは、外的な基準を必要としている。
                 —ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン(哲学者)


90点ルール


何かを選ばなきゃいけない状況で、様々な基準を設け、それに9割満たすものだけ選び取る。7割や8割満たしていてもきっぱりと切り捨てる。


この、90点ルールは、トレードオフを強く意識させる方法です。というのも、完璧な選択肢が現れるまで大多数の選択肢を容赦なく却下するからです。


非エッセンシャル思考の人は、「上司に言われたからやる」「誰かに頼まれたからやる」あるいは「みんながやっているからやる」という、消極的な基準でものごとを選んでいる、と言います。(自分も思い当たる節が……)



そこで、チャンスや誘いを正しく選別するには

  1. そのチャンスを書きだす
  2. 「これだけは満たしてほしい」という最低限の基準を3つほど書き出す
  3. 「こうだったら最高だ」という理想の基準を3つほど書き出す


このすべてを満たしているものだけ承諾する、というのが必要です。


つまり、絶対にイエスだと言い切れないなら、それはすなわちノーである、ということです。


エッセンシャル思考

・上位10%のものごとにだけYESと言う

・明確で厳しく、正しい基準を採用する

・「自分の求めている、やりたいことだから」やる



捨てる技術


目標   —最終形を明確にする


目的が明確でないと、人は動かないし、動かすこともできない。
計画でないとき、人はどうでもいいことに時間とエネルギーを浪費する。


では、会社や個人の目標を明確にするにはどうしたらいいのでしょうか?


その1つのやり方が「本質目標」です。

上の図から分かるように、
ビジョンやミッションなどは、魅力的だが抽象的
四半期目標や短期的な達成要件は、具体的だが平凡


本質目標は、具体的で、かつ魅力的大きな意味があり測定可能なもの。


本質目標を正しく決めれば、その後の無数の決断が不要になる



エッセンシャル思考

・具体的かつ魅力的な戦略

・意味があり、心に残る本質目標

・ひとつの決断によって、その後のあらゆる決断を不要にする



拒否   —断固として、上手に断る


勇気とは、プレッシャーに負けない品格のことだ  —アーネスト・ヘミングウェイ


人は、周囲の期待やプレッシャーに負けて、不本意なYESを言ってしまう。よく考えもせず、目の前の相手を喜ばせたいと仕事を引き受け、後に深く後悔する


エッセンシャル思考の人は、そのような気分の良さは長続きしないことを分かっており、本当に重要なことをやるために、本質的でない依頼は断るのです。



「それが出来たら苦労しない!」という声が聞こえてきそうです(笑)。



では、どうすれば上手に断れるのでしょうか?


 
判断を人間関係から切り離す


頼みを断ることが、相手を拒絶することだと感じてしまわずに、相手との関係性から切り離して考える。



依頼や仕事を断ることが、その人に対する拒絶だと捉えてはいけません。



トレードオフに目を向ける


ここでYESといったら、自分は何を失うだろうか?
そのトレードオフに目を向けられれば、中途半端なYESは言えなくなる。


何でもかんでもYESと答えて引き受けてしまっては、自分が本当にやりたいことが妨害されてしまったり、相手を深く傷つけてしまうことに繋がります。


そう考えられると、中途半端にYESとは言えなくなるのではないでしょうか?



好印象よりも敬意を手に入れる


目先の好印象と引き換えに、長期的な敬意を手に入れられる。
また、上手く依頼を断ることは、「自分の時間を安売りしない」というメッセージになる


何でもかんでも引き受けてしまうことの弊害として、自分を雑用だと認識させてしまうことが挙げられます。


「こいつに頼めばいいや」と思われてしまうのは何とも勿体ないことでしょう。


自分と相手との間に知らずのうちに上下関係を築いてしまいます


エッセンシャル思考

・きっぱりと上手にNOと言う

・本当に重要なことしか引き受けない



キャンセル   —過去の損失を切り捨てる


サンクコスト(埋没費用)に対する心理的バイアス



サンクコストとは、すでにお金を払ってしまったという理由だけで、損な取引に手を出し続ける心理的傾向のこと。
「ここでやめたら今までの投資が無駄になる」と思うあまり、望みのない投資を重ね、さらに抜け出せなくなる。


そんな経験をしたことがあるでしょう。


これは、もっと身近な例として、

  1. チケットを買ってしまったという理由だけで、ひどくつまらない映画を最後まで観る

  2. いったんバスを待ち始めたら、タクシーを捕まえるのが悔しくて、いつまでもバスを待ち続ける

  3. 一度ゲームに手を出したら、何か景品が手に入るまでお金を入れ続ける

などが挙げられます。


この心理効果は、うまく使えば商売などにも活用できますが、自分が陥ってしまうと怖いものです。


授かり効果


所有しているという理由だけで、失うのがもったいなくて捨てられない。
まだ持ってないとしたら、わざわざ買わないはずなのに。


そうやって捨てられずにたまっていくガラクタ………。
こんな思いをしたことがある方もいると思います。



では、どうしたら、この不本意な心理から脱出することが出来るでしょうか?


  1. 持ってないふりをする


「どれくらいの価値があるか?」ではなく「まだ持っていないとしたら、手に入れるのにいくら払うか?」と考える。


仕事や活動でも、「このチャンスを逃したら、どう感じるか?」ではなく「もしまだこのチャンスが手に入ってないとしたら、どれだけコストをかけて手に入れるか?


と、発想の転換が出来たら、要らないものといるものの仕分けが容易にできると思います。


 2.逆プロトタイプ



プロトタイプは、何かを始める前に大まかなモデルを試してみることを言いますが、何かをやめる時も、本格的に撤廃する前に簡単な形で試してみる、という逆プロトタイプもあります。


例えば、顧客や友人、家族のために苦労してやっていたことを「これは本当に必要なことだろうか?」と疑いをかけることで一度辞めてみる。


しばらく様子を見て、特に誰も困ってない。


そうやって、顧客や友人、家族のために苦労してやっていたことが、実は相手にとって何の意味もなかったことが分かる、ということがあるかもしれません。



エッセンシャル思考

・「もしまだ1円も払ってなかったとしたら、今からこれに投資するだろうか?」

・「今これをやめたら、何に在韓とお金を使えるだろう?」

・すすんで損切りをする


感想


「本当に必要なことだけに時間とエネルギーを使うこと」を学んだはずなのに、この感想文を書きあげるのに約2時間かけてしまいました。


なんとも皮肉なことだろうか…


「ここまで書いたら最後まできれいに仕上げたい」という、まさに上記でご紹介した「サンクコストに対する心理的バイアス」に陥ってしまいました。



とにもかくにも、自分の行動をこうやって見直すキッカケになる本であることは間違いないし、1000円払って勝った甲斐があったなぁと思いました。

『革命のファンファーレ』~現代のお金と広告~ 西野亮廣  



革命のファンファーレ 現代のお金と広告
革命のファンファーレ 現代のお金と広告
幻冬舎
2017-10-04

 


"革命のファンファーレは鳴った。農業革命や産情革命よりも大きな革命が僕らの時代を直撃した。情報革命だ。
 ものの売り方が変わり、働き方が変わり、お金の形が変わり、常識が変わり、道徳が変わっていく。超高速回転で。"





芸人として活躍する一方、絵本作家として世に送り出した作品を次々とベストセラーに仕立て上げた西野亮廣氏。その中でも特に売れた彼の作品『えんとつ町のプペル』に用いられたお金の集め方やその根底にある彼自身のお金に対する考え方、そして芸人としての自身の捉え方や広告論を本書の中で展開する。




彼の口調はさっぱりとしていてブレない。自分の軸を決してズラさない姿勢がありありと伝わってくる。
そんな彼の文体にどんどん引き込まれていった。




本書は『えんとつ町のプペル』の誕生の裏側に始まり、そしてそこで使われたマーケティングの手法、彼自身の絵本、お金、広告などへの姿勢を述べ、人々の行動分析、インターネット時代に必要な、以前の常識からの脱却、販売戦略と続いていく。



印象的な部分


お金とは信用である


例えば、自転車が欲しければ自分がもっているお金(=信用証明書)と自転車を交換する。お金が貝殻だった時代から変わらないのは「お金とは、信用を数値化したものである」ということ。




好感度」と「信用」、「認知」と「人気」は全く別物である


タレントは視聴者から容易に好感度を得られるが、信頼は得にくい。一方、アーティストは信用を得やすい。
テレビタレントはギャラの出処がスポンサーで、そこに信頼関係はない。
アーティストはお客さんからのダイレクト課金が収入なので、お客さんとの信頼関係が存在する。
そしてテレビタレントは「好感度」を得た結果、人々に「認知」され、スポンサーからギャラを得られる。
アーティストは人々に「認知」され、「人気」を得るとお客さんからお金という「信用」を頂ける。



つまり、認知から好感だけ得られるのがタレントで、お金という信用を得られるのがアーティスト。ベッキーとゲスの極み乙女の不倫騒動でベッキーが活動停止になった一方、ゲス側はそうはならなかったのはこの点から説明できる。




お金を稼ぐな信用を稼げお金は後からついてくる



信用を勝ち取る方法の一つは「嘘をつかない」ことだと彼は言う。



そして嘘は「感情」でつくのではない。我々は「環境」によって嘘をつかされる




入り口でお金を取るな。マネタイズのタイミングを後ろにズラして可能性を増やせ。

映画『君の名は』や村上作品にしても、作品の内容がニュースになることはほとんどなく、ニュースになるのは賞だったり作品にまつわる数字だ。



売れている作品がさらに売れる理由の1つは、売れている作品がニュースにしやすい数字を持っているから




また、テレビの無料放送は入り口(=視聴)でお金を取らず、後に番組のグッズや有料放送、会員加入につなげるマネタイズの為
「無料公開してユーザーを増やして、そのうち100人に1人でいいからお金を払ってくれる人がいたら売り上げが伸びるよね」という判断のもと、そういうシステムを採ってる。




テレビにしてもツイッターにしてもGoogle、Yahoo!にしても、私たちは直接お金を払ってない。無料にすることでより多くの人に利用してもらい、多くの人が利用しているという価値を生み、広告枠その他で売り上げを伸ばしている
一見、無料のようで実はマネタイズのタイミングを後ろにズラしているだけの話。




「すべてのサービスには、利用したその瞬間からお金を支払うべき」と考えてると、ツイッターやGoogleなどのマネタイズのタイミングをズラすという発想は出てこない




人が行動するときの動機はいつも「確認作業」


時代は変われど、変らないものがあると言う。それは



「人が時間やお金を割いて、その場に足を運ぶ動機は、いつだって確認作業で、つまりネタバレしているモノにしか反応しない




ルーブル美術館のモナ・リザを見に行く人はテレビか教科書か何かで既にモナ・リザを見ている。
これがもし「お金を払ったら有名画家の素晴らしい絵を見せますよ」という「袋とじ」や「福袋」的な商法をしていたらここまで有名にならなかった。





つまり、人はけっこう冒険しないもので、すでにある程度知られていて、実力が測られているモノにしか反応していない
そして「それを生で見たらどうなるの?」というような「確認作業」のために重い腰を上げている




だから、無料公開して人々の確認作業(=実際に手に取ってもらうことや足を運んでもらうこと)につなげることがインターネット時代の生存戦略





さらに、無料公開する際のテクニックとして、ビジネス書や連続ドラマ、一話完結型の番組などの分解可能なサービスは無料公開の出しどころを散らすことで、「それら散った情報回収のコストよりも実際にまるまる一つの作品やサービスを買ってしまったほうがコストが抑えられる」という判断を誘い、売り上げが伸びる




”作品の無料化は完全な実力社会を生み、格差を発生させる”




端的にいうと、無料化は「実力の可視化」であり、それによりこれまで以上の格差を生む。
実力のないものの作品は淘汰され、実力のあるものは評価されるからだ。




だから、無料公開が常識になった今やるしかないことは1つ、「作品のクオリティを上げること」だ。




「体験×おみやげ」で作品を売る

僕らは、有名な画家の作品は買わないのに、旅行先で作者不明のオブジェは買ってしまう。
新品の本は買うのを躊躇うのに、訪れた博物館や美術館で本よりも高いパンフレットは買ってしまう




ここから言えることは、人は「作品」にはお金は出さないが、「思い出」にはお金を払うということ。




作品は生活必需品ではない。だから買う人はめったにない。
しかし同じ「作品」であるはずの「おみやげ」にはお金を払う。




「作品」が「思い出」に変わるからだ。



今は、ほとんどの娯楽がスマホで完結してしまう時代。


そんな中でも「体験」はスマホでは出来ないからこそ「体験」と「作品」をつなぐ





「作品(=おみやげ)」×「体験」「モノ消費&コト消費」なのだ。



信用時代の宣伝は、口コミが最強。口コミをデザインしろ。

知らないイベントの宣伝の「面白いから来てね!」よりも、友人の「めちゃくちゃ面白かった!お前も行ったほうがいいぞ!」のほうが心が動く。


それはなぜか?




どこぞの知らない広報担当者の「来てね」は信用がなく、友人の呟きは友人たる故、信用があるからだ。




現代の宣伝力は、つまり信用力だ。信用が担保されていない広告になんの広告効果はないのだ


そしていかに口コミさせるかが広告のカギとなる。
その口コミの発信者の友人の心を動かすからだ。




要は、口コミを出す人の友人関係を利用するわけだ。
自分一人で広告してはいけない。広告させることが大切なのだ。




お客さんは、お金を持っていないわけではない。お金を出すキッカケがないだけだ。




なぜ本屋さんで本が売れないのだろうか?




本一冊の値段は約1.500円。
同じ1,500円でも友人へのプレゼントには惜しみなく出すし、ましてやそれよりも数倍高いシャンパンをキャバ嬢に買ってあげる客だっている。



ここにどんな心理が働いているのだろうか?



プレゼントやシャンパンにはあって、本屋さんの本にはないもの、それはコミュニケーション



本屋さんで本を買っても誰ともコミュニケーションは生まれない。
だから本屋さんでは買わない。




そして本屋さんに抜け落ちているモノ、コミュニケーションの他にもう1つ。「お客さんの手柄」だ。


僕たちがプレゼントを買う理由は「相手に喜んでもらいたいから」



ではなぜ喜んでもらいたいのだろうか?



目の前の相手を喜ばせたとき、ポイントはどこに入るだろう?





そう、「自分」だ。





僕らは自分のポイントを上げるために、目の前にいる相手を喜ばせる。 


しかし本屋さんで本を買っても自分にポイントは入らない。


ここにお客さんの心理の違い、売れるか売れないかの境界線が存在する。




だから、何かを売りたいときは、購入の後押しとなる一言だったり、自分にポイントが入る環境だったりを整えてあげる必要がある



後悔の可能性」を片っ端から潰せ


西野さんが『えんとつ町のプペル』のポストカードを売ろうとしたとき、商品棚に並べるのは1点か3点か10点かでそれぞれ試したという。


「1点」の時は、お客さんからするといきなり「買うか?買わないのか?}を迫られる状況になるということ。
そうすると、「他に比較対象がないのに買っても大丈夫なのか?」という「後悔の可能性」が生まれ、途端に買われなくなる
この1点が信用を持っていたら話は別なのだが。



「3点」の時は「どれが一番いいだろうか?」と考えているうちに結構な確率で買ったという。



3つの中から”自分で”選んだので「後悔の可能性」が少ない



「10点」の時は3点と同じく「どれが一番いいんだろうか?」とお客さんは考える訳だが、選択肢が多すぎるので「ここで1つ選んで買ったとして後で「あれ」にすればよかった……と後悔しないだろうか?」という「後悔の可能性」が生まれるので、結局、商品棚から去ってしまう。




要は、お客さんを動かす「モノの買わせ方」は「後悔の可能性」を取り除いてあげることだ




その辺に落ちてるゴミが売れないのは、ごみを買ったら後悔するからに他ならない。
その後悔さえなくしてしまえば簡単な話、ゴミでも売れる。




ここで、西野さんの実験の他の実験を紹介する。


「ゴミ=100万円」という値札の「100万円」を赤いペンで斜線を入れ、「大特価!本日に限って100円!!」としたところ、すぐに売れたという。



その人は100円で「ネタ」を買ったのだ。
100円で会話の中心となれるコミュニケーションツールを買ったのである。





このように、「ネタ」という付加価値をつけてあげれば、「後悔の可能性」を取り除くことができ、ゴミでも売ることが出来る




出版のハードルを下げ、国民全員を作家にする出版サービス、「おとぎ出版


「本を出版したい」という声がたくさんあるのに、出版社は首をタテに振らない。
流通などの「中間の取次」があるから数千~1万冊売れないと採算が合わないのだ。


結果的に、数千~1万冊は売れる見込みがある作品しか出版社は受け入れない。



「おとぎ出版」は、ニッチ(個人作家)向けのサービス。


仕組みはこうだ。


1.本を出したい人がクラウドファンディングで事前にその本の買い手を募る。
2.100人の買い手が見つかった時点で出版が決定。
3.「おとぎ出版」がその本のデータを受け取り、製本し、買い手に届ける。


取次を介していないので印税は従来の数%から33%に跳ね上がる。


作家はその本の実績をもって大手出版社に売り込んで、マス向けの本を出版してもらうことだってできる


要は、マス向けまでの「橋渡し役」を担うのだ。




本ではなく、店主の信用を売る古本屋、「しるし書店




”キズ本”




本に書き込みやページの折れがあると途端に価値を失うが、それら”キズ”が孫真和さんnよるものだったらどうだろう?



孫正義さんが読んで、孫正義さんが線を引き、孫正義さんがページを折って、孫正義さんが余白部分に書き込みをした、そんな、孫正義さんの「しるし」が入った、BOOKOFFでは取り扱ってもらえないような”キズ本”は、むしろ定価よりも価値があるのではないか?


孫正義さんが「どこを見て、何を面白がったか?」という、”孫正義さんの視点”が付加価値になっているからだ。



そう、「しるし書店」は店主(自分が読んだ本を売るから)の視点、つまりは店主の信用を売っているのだ。



今まで、スポーツが得意な人には「スポーツ選手」という「職業」、音楽が得意な人には「音楽家」という「職業」が存在していたのに、読書が得意な人には職業が与えられておらず、「趣味」の中に埋没されていた


「しるし書店」は、読書家の「読書が得意な人が勧めるあの本、面白いな!」という信用をお金化するのだ。



”今の時代、すべての信用は「お金化」できる。あとはその信用をお金に換える「両替機」を用意するだけ”




踏み出す勇気は要らない。必要なのは「情報」だ。


自分の個性というのは「編集結果」だ。



”編集素材たるアイデア(=他人の脳ミソ)の待ち合わせ場所になった者勝ちで、とにかく行動する人間が待ち合わせ場所として重宝される”



つまり、人から情報を与えられる、それも持ち掛けられる形でアイデアを得た人が行動して行動して、さらなる情報を勝ち取り、次の行動を生む



そして行動することに勇気は要らない。



子どものころに1人で電車に乗れなかったのに、今は乗れるのは、勇気を手に入れたからではない。「電車の乗り方」という情報を手に入れたからだ。



要は、情報さえ手に入れれば行動できるのだ。勇気云々という次元ではなくなる。




”情報は、行動する人間に集まり、さらなる行動を生み、また情報が集まってくる



だから情報を手に入れる努力をするしかない行動は後でついてくるから




何かやりたいことがあるなら、それに関する情報を徹底的に集める




感想


「なんてすごい人なんだ」



読み始めた10秒後には西野亮廣の世界観に連れていかれた。



常に時代の移り変わりを冷静に見つめ、「おかしい」と思うことはとことん追求し、「正しい」と思ったことはどんなに大勢に反対されようと実行し、反対派を自分の味方にまでしてしまう。


そして自分の作品が売れるためにはどうしたらいいかを人間の行動原理から突き止める姿勢やマーケティング理論にただただ感銘を受けた。


もたもたしている暇はない。彼の成功を「真似る」ことから始めてみようと思う。