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本のご紹介、読書日記

無印良品は、仕組みが9割


無印良品は、仕組みが9割  仕事はシンプルにやりなさい
無印良品は、仕組みが9割 仕事はシンプルにやりなさい
角川書店




無印良品は日本発の国民的ブランドであり、私たちに広く親しまれ、今や世界でも「MUJI」と呼ばれるなど、多くの人々のハートを掴んでいます。



店内は綺麗に清掃され、白と黒のモノトーンを始めとしたアースカラーがふんだんに使用され、自然をコンセプトにした商品の魅力で溢れています。



そんな無印良品の躍進の背景には、どんな秘密が隠されているのか?



それは、「MUJIGRAM」と呼ばれる、2000ページにも及ぶ膨大なマニュアルです。



私たちはマニュアルと聞くと、どこか無機質な、ロボットのように人間を操るような、そんなイメージを膨らませてしまいます。



しかし、無印良品のマニュアルは決して無味乾燥なものではなく、徹底的にムダを省き、楽しく仕事が出来るための最強のツールなのです。



いまとなっては無印良品は世界的ブランドですが、かつては「無印良品はもうおわりじゃないか?」と業界でささやかれた時期もある、谷底への転落を経験した企業です。



その時期の無印良品を立て直したのが著者で、当時の社長で現在は「良品計画会長」である松井忠三氏です。



彼曰く、無印良品を立て直すために取り掛かったのが「仕組み化」です。



何事も「基本」がなければ「応用」もないように、「会社の仕組み」がなければ、そこから「知恵」も「売り上げ」も生まれません。



・シンプルに仕事ができる仕組みがあれば、ムダな作業が無くなります
・情報を共有する仕組みがあれば、仕事にスピードが生まれます
・経験と勘を蓄積する仕組みがあれば、人材を流動的に活用できます
・残業が許されない仕組みがあれば、自然と生産性が上がります



この理念に基づいて、仕事を「標準化」するマニュアル作りに取り掛かりました。




”神は細部に宿る”




ドイツの建築家ミース・ファン・デル・ローエが残した言葉です。



ディテールにこだわることが作品の本質を決めている、という意味だと筆者は解釈しています。



企業の力を決定づけるのも、ディテールであり、それが「仕組み」だとも言っています。





では早速、無印良品のマニュアル「MUJIGRAM」への旅を始めましょう!





目次


序章:なぜ無印良品には2000ページものマニュアルがあるのか 
-「標準」がなければ「改善」なし -


1章:売り上げとモチベーションが「V字回復する」仕組み
-「人を変える」ではなく、「仕組みを作る」-


2章:決まったことを、決まった通りキチンとやる
-「経験」と「」を排除せよ-


3章:会社を強くするための「シンプルで、簡単なこと」
-「他者」と「他社」から学ぶ-


4章:この仕組みで「生産性を3倍にできる」
-「報われない努力」をなくす方法-


5章:自分の仕事を「仕組み化する力」をつけよう
-「基本」があれば「応用」も出来る-




商品開発から経営、接客まで……すべての仕事の原点



無印良品の店舗で使っているマニュアル「MUJIGRAM」。



ここには2000ページ分のあらゆる仕事のノウハウが詰め込まれています。



これほど膨大なマニュアルを作ったのは、「個人の経験や勘に頼っていた業務を”仕組み化”し、ノウハウとして蓄積させる」ためです。



マニュアルの各項目には「作業の目的・意味」が書いてあります。



これは、「どのように行動するか」ではなく、「何を実現するか」という仕事の軸をブレさせないためです。



作業の意味を理解できれば、そこの問題点や改善点も発見できるようになります。



勉強だって同じですよね。



理解できなければその先にも進めない。



だからこそ、意味を理解させるマニュアルは、実行力を養うテキストであり、「自分がどのように働くか」を考えるための羅針盤にもなるのです。




「こうしたほうが良いのに」を集める



MUJIGRAMには、「それぐらい、口でいえば分かるのでは?」と思われるような内容まで明文化しています。



店の雰囲気は、レイアウトや商品の並べ方、スタッフの身だしなみ、掃除の仕方……といった細部の積み重ねで作られますが、このような「細部」は往々にして個人個人の判断でなされてしまいがちです。



ちょっとしたことだからこそ、「人に聞かなくても大丈夫だろう」だったり、「これくらいのことを聞くのは憚られる」などと、個人の判断に委ねられてしまうのです。



社内で統一するのが難しい「細部」こそ、「言わなくても分かる」ような「ちょっとしたこと」こそ、マニュアル化しないといけないと言うのです。



そして、マニュアルは現場で働くスタッフたちが「こうしたほうがいいのに」と感じたことを積み重ねることで生まれた知恵なのです。





マニュアルを作ったところが「仕事の始まり」



先程、「細部」こそマニュアル化することの重要性を書きました。



無印良品には、「マニュアルをつくれる人を育てる」という目標があります。



というのも、マニュアルを作る以前の無印良品では、店長が思い思いに店をつくり、スタッフの指導をしていたそうです。



だから、店ごとにバラつきがありました。



これでは、どの店に行っても同じ商品を手に取り、同じサービスを受けられないし、どの店に行っても「無印らしさ」を感じてもらえません



そのために、「統一」が必要でした。



統一化を図るためのマニュアル作りに全社員・全スタッフが参加することで、店それぞれの問題点を洗い出せるし、同時に店の統一化が出来ます。



それゆえ、マニュアルを作ったところから、仕事はスタートするのです。






「理念」を浸透させるには



MUJIGRAMには、「なぜその作業が必要なのか」が記されていると書きましたが、肝心なのは、どのように行動するか(理念)ではなく、何を実現するか(実践)です。



理念や社訓を音読させるブラック企業がありますが、そんなことは全くの無駄だと彼は言います。




理念や価値観は、ただ言葉で語って聞かせても、具体性実践を伴わなければただの言葉です。



理念は、それを実行するうちに、納得して、体に染みつくようにしなければなりません。



「社員全員の心を一つにしよう」とスローガンを掲げるより、同じ作業を全員でやるほうが、自然と心は揃ってきます



だからこそ、無印の根幹であるMUJIGRAMを、アルバイト含め社員全員で作り上げていくのです。










終わりに



マニュアルに対しては、自分も消極的なイメージを持っていました。



「決まった型通りにしか動けなくなるのでは?」



そう思っていました。



しかし、その「型」を周りの人を巻き込んで完全なものにしてしまえば、仕事が「効率化」されます。



チョコだって、型がなければチョコの原型にも成り得ません。



型があってはじめてチョコはチョコになれるのであり、そこからホイップをつけたり、粉糖をまぶしたりとアレンジ、本書の言葉を使えばディテールが生まれるのです。




改めて、マニュアルの重要性を痛感した次第です。