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これ、いったいどうやったら売れるんですか? 永井孝尚

これ、いったいどうやったら売れるんですか? 身近な疑問からはじめるマーケティング (SB新書)
これ、いったいどうやったら売れるんですか? 身近な疑問からはじめるマーケティング (SB新書)
SBクリエイティブ





今回は、以前本ブログでご紹介させていただいた『100円のコーラを1000円で売る方法』の筆者、永井氏のマーケティング論についての本です!


『100円のコーラを1000円で売る方法』と同様、身近な例を用いて消費者の心理や行動に基づいたマーケティング理論を分かりやすく展開しています。



目次




第1章 腕時計をする人は減っているのに、なぜ腕時計のCMは増えているのか?
第2章 人はベンツを買った後、どうしてのベンツの広告を見てしまうのか
第3章 雪の北海道でマンゴーを育てる?
第4章 あの行列のプリン屋が赤字な理由
第5章 なぜセブンの隣にセブンがあるのか?
第6章 女性の太った財布には、何が入っているのか?
第7章 きゃりーぱみゅぱみゅは、なぜブレイクしたのか?
第8章 古本屋がふつうの本屋よりも儲かる理由




人はベンツを買った後、どうしてベンツの広告を見てしまうのか


認知的不協和の解消


お客さんは高い買い物をした後、「本当にこれを買ってよかったんだろうか?」という不安感に苛まれています。

自分が買った商品が本当に価値のあるものなのか知りたい、確かめたいから広告を見る。

この認知的不協和をなくすために広告を見てしまうのです。

だから、本当の商売の始まりは「売った後」であり、「やっぱり買ってよかった」と思ってもらうために、アフターサービスが非常に重要になってきます。

継続的な客、つまりリピーターやその先のひいき客、ブランド信者につなげていくために販売後の対応が欠かせないのです。




雪の北海道でマンゴーをつくる?


商品開発の目的は、顧客の創造である


みなさんは、十勝マンゴーをご存知でしょうか?

詳しい育成方法などは割愛し、十勝マンゴーの市場における役割を説明したいと思います。

十勝マンゴーは、春や夏に収穫が盛んな宮崎マンゴーが埋められない秋・冬の穴を新規市場として開拓し、冬でもおいしいマンゴーが食べられるようになったことに大きく貢献しました。

実は、この十勝マンゴーは、新規市場の開拓のための商品開発が目的ではなく、その先の顧客の開発にあります。


”企業の目的は、顧客の創造である”    —ドラッガー


実はこの例は、抽象化するとヒット商品というのは、「お客さんが気づかないニーズ」に気づいて商品開発し、顧客を生み出して新規市場の開拓した、と言えます。


口臭予防のリステリンも、「口臭で人間関係を悪くしたくない」という隠れたニーズをヒット商品につなげたと言えます。



お客さんも気づかないニーズというのは、しばしば市場においてはブルーオーシャンであることが多いです。


だから、ここを開拓することが他社との差別化につながります




なぜセブンの隣にセブンがあるのか?



ランチェスター戦略


ランチェスター戦略とは、もともと戦争に勝つ為の戦略で、経営用語に転用され、「弱者の戦略」と「強者の戦略」に分けられます。

イオンとセブンイレブンの例

イオン…強者の戦略
*広域で戦う(全国展開)
*総合力で戦う(豊富な品揃え)
*遠隔戦(大店舗に遠方から集客)

セブン…弱者の戦略
*局地戦に持ち込む(ドミナント方式)
*得意技で戦う(3000品毎日入れ替え)
*接近戦(顧客の生活圏に小店舗)


セブンは、イオンという強敵を相手に真っ向から勝負を仕掛けても勝てないとわかっています。


だから弱者なりの戦略をとることでイオンを自らの土俵に上がらせないことに成功しています。


戦うフィールドを変えてしまうというのはマーケティングにおいては逆転の発想として必要となると思います。



女性の太ったの財布には、何が入っているのか?



はなまるうどんのマーケティング戦略


お昼時、あるうどん屋さんには多くの女性客が列をなしていた。彼女らのお目当ては

「日本全国、どんな店の期限切れクーポンでも、お好きなメニューが50円引き!」

というはなまるうどんのキャンペーンである。一見、はなまるうどん以外のお店のクーポンを使えるようだと、お店にとっては損なように見える。


しかしこれも立派なマーケティング戦略、つまりプロモーションなのです。


当時、はなまるうどんは「健康うどん」を商品の軸にしており、女性客の取り込みが喫緊の課題であった。そこで、女性客の行動を徹底的に分析していた当時の社長は、女性の財布がパンパンに膨れ上がっていることに気づいた。


「あの財布には何が入っているのだろう?」と疑問に思った社長は、女性社員の財布を見せてもらい、期限切れのクーポンがぎっしりと詰まっていることを知った。


そして、「節約が大好きな女性客は、クーポンが切れてしまったことにさぞ悔しがっているだろうから、これを活用しない手はない」と考えた社長が編み出したのがこのキャンペーンなのです。


クーポンが使えなくて悔しがっている女性客は、その段階でははなまるうどんにとっては潜在客見込み客。彼女らを今回のキャンペーンによって新規顧客として取り込み、その先には、健康うどんを知ってもらうことでリピーターひいき客にできるのです。



プロモーションは、目立つだけではダメ


プロモーションには、実は落とし穴があって、「どんどんプロモーションして、目立とう。話題になろう」と考えてしまうと、目立って終わりになってしまう。


プロモーションの目的は、「伝えたい相手に伝えたい内容を伝えること」だ。
だから、そのターゲットに伝わるようにメッセージを発信しなきゃいけない。


はなまるうどんの例でいえば、「健康意識の高い女性」を伝えたい相手として顧客のターゲットにし、彼女らにメッセージを伝えるために「期限切れクーポン大歓迎」というキャンペーンを行った。



マーケティングミックスとは?


商品戦略」「価格戦略」「チャネル戦略」「プロモーション戦略」の4つをマーケティングにおいてはマーケティングミックスと呼んでいます。

マーケティングでは、このマーケティングミックスを組み合わせてターゲットのお客さんに価値を作りだし、伝え、提供していく


はなまるうどんの場合、「健康への意識が高いお客さん」というターゲットに対して商品戦略により「健康うどん」を作り出し、プロモーション戦略価格戦略を組み合わせることで「期限切れクーポン復活祭」というメッセージを伝え、さらにチャネル戦略によって女性が入りやすいカジュアルなお店にして価値を提供しているのです。


このマーケティングミックスがバラバラだと、成果は出ないといいます。


マーケティングミックスをバラバラにしないためには、まずバリュープロポジションを考えないといけません競合他者との差別化を図るために自社の強みや弱みを分析し、どんな商品を売るのかをじっくり考えることが成功のカギとなります。