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本のご紹介、読書日記

センスは知識からはじまる ~センスは、知識で身につける「スキル」である~   水野学


センスは知識からはじまる
センスは知識からはじまる
朝日新聞出版
2014-04-18




「センスって生まれつき備わっているものだから、鍛えられるものじゃないでしょ?」


そう思った方にこそ読んでいただきたい1冊です



自分も、センスって何か漠然としたものというイメージで、デザイナーなど、一握りの方にのみ備わっている感覚だと思っていました。


しかし、本書はその「センス」という多くの方が”感覚的”だと捉えがちであるものを言葉で定義し、センスに対する誤解を解いていき、どのように鍛えたらいいのかなどを解説してくれます。



目次


prologue センスは生まれついてのものではない
Part1 センスとは何かを定義する
Part2 「センスの良さ」が、スキルとして求められる時代
Part3 「センス」とは「知識」からはじまる
Part4 「センス」で仕事を最適化する
Part5「センス」を磨き、仕事力を向上させる
epilogue 「センス」はすでに、あなたの中にある





センスとは何だろうか? 



「センスが良い悪い」と私たちはよく口にします。


服を選ぶ時のセンスとは「カッコいいかそうでないか」と同じような意味だと思います。



では、経営のセンスとは「売り上げが良いか悪いか」「業績が上がっているか下がっているか」でしょうか?


たとえ業績が良くても、社員の犠牲の上にそれが成り立っていたら、経営者としてはセンスが良いとは言えませんよね?


逆に、業績がいま一つでも、よい人材を育成し、活き活きとした職場を作り出せている経営者はセンスが良いと言えるかもしれません。



つまり、「センスの良さ」とは、数値化できない事象の良し悪しを判断し、最適化することです。



売り上げや業績といった目に見えてるものは数値化できますが、センスは単純に数値化することはできないのです。



おしゃれもカッコよさも可愛らしさも、数値化できません。



しかし、そのシーン、その場にいる人、自分の個性に合わせて服装の良し悪しを判断し、最適化することはできます。それを「カッコいい、センスが良い」と言うのです。



「日本で一番売れている服」はある程度数値によって図れますが、それを着たらセンスが良くなるわけではありませんよね?





まず「普通」を知ることが必要である



センスが数値化できない、目に見えないものだからこそ、センスは「分かりにくいもの」「特別な人だけが生まれつき備わっているもの」「天から降ってくるひらめきのようなもの」というイメージを持たれてしまうのでしょう。



それ故に、商品開発や企画の際に、「いまだかつて誰も思いつかなかった、普通じゃないアイデア」を追い求めてしまいます



しかし、センスが良い商品を作るには「普通」という感覚が非常に大切になってくると言います。



普通とは、大多数の意見を知っていることでもなく、常識的であることとも違います。



普通とは、「いいもの」が分かるとこと。
普通とは、「悪いもの」も分かるということ。
その両方を知ったうえで、「一番真ん中」が分かるということ。



そのためには、多角的・多面的にものごとを測ったうえで「普通」を見つけ出し、設定する能力が必要です。



あるものが核に持っている「価値」というものを観察し、それと同じような価値を持つものを他に探してみて、それらを比較する。すると、それらの持つ「良い・悪い部分」が見えてきて「普通」が分かります



そして、自分が認識している「普通」の基準と、あらゆる人にとっての「普通」を、イコールに近づけられるようになればなるほど、数値化できないものを最適化しやすくなる、と言います。





子どもは自由にセンスを発揮している



芸術は、絵を描く、歌う、踊ったり体を動かすという、美術、音楽、体育の3つが当てはまると筆者は言います。



幼稚園児は、みんなすごく楽しそうにクレヨンを握り、夢中になって自由な線を描きます。



ところが、無邪気に歌ったり、絵を描いたりすることを楽しんでいた子供は



「絵が上手い・下手」「歌が上手い・下手」



という、数値化できない基準で評価されてしまいます。



しかし、美的センス=実技ではありません



優れた画家を育ててきた画商たち、審美眼というセンスが非常に優れており、絵が描けずずとも美的センスがある人たちでした。



音楽のセンスがある人が、美声の持ち主とは限りません。歌が下手、楽器も触れないし曲も作れない。だけど、歌の良し悪しを聞き分ける名プロデューサーはいますし、彼らは音楽のセンスがある人たちでしょう



だから、私たち一般人にだって実技以外の美的センスは鍛えられるのです。





すべての仕事において、「知らない」は不利



先程、普通を知ることがセンスを身につける方法だと書きましたが、普通を知る唯一の方法は知識を得ることです。



センスとは知識の集積である




これが、筆者の考えです。



たとえば、文章を書く時に「あいうえお」しか知らない人と「50音全て知っている」人とでは、作られる文章のクオリティが雲泥の差であることは容易に想像できます。






ひらめきを待たずに知識を蓄える



最初に、商品開発や企画を考える時に「誰も見たことがない、斬新な発想」「他とは全然違うもの」を目指そうとする人がいると書きました。



しかし、まずは「誰もが見たことのあるもの」という知識を蓄えることが大切だと言います。



筆者の経験上、「誰も見たことがない、あっと驚く画期的なアイデア」というのは世の中のアイデアの中の2%ほどに過ぎないと言います。



逆に、「あっと驚く売れないアイデア」というのは63%にも及びます。



つまり、「誰も見たことがないような、あっと驚く他とは異なる斬新なアイデア」をひらめきたいという人は、たった2%にばかり目がいき、全体の63%を無視してしまっているのです。




まずは、「あっと驚く売れないアイデア」に目を向け、現実の厳しさを知ってから「あまり驚かないけど売れるアイデア」を模索するといいと言います。



新たにものを作るためには、過去に存在していたあらゆるものを知識として蓄えておく必要があります




イノベーションは、知識と知識の掛け合わせである



よく、アイデアは「○○と○○の組み合わせである」と耳にします。



世の中に既にあるものをAとすると、「あっと驚かないけど、新しいもの」というのはA'であり、いきなりXまで飛んでしまうと、世の中に受け入れられないと言います。




「あっ!」というより「へぇー」にヒットは潜んでいる




筆者はそう考えています。


ワープロや固定電話を使っている人にとって、携帯電話は「へぇー」ですが、江戸時代の人に渡したら、それはさきほどの例でいうXであり、「え?」という反応だけで「どこがいいの?小判が出てくるわけでもあるまいし」と言われて終わってしまいそうです。



あっと驚く心の裏には、恐怖も潜んでます



もし、「明日、火星に連れてってあげるよ」と言われたら、みなさんはどうしますか?



「はい!ぜひ!」と即座に答える人は少ないはずです。



新しいものを疑う気持ち、どんな感じかを感じ事前に確かめてから行動したい気持ちは、原始時代から存在します



「確かめたい本能」がなければ、「食べログ」や「トリップアドバイザー」などのサービスも生まれなかったはずです。



人間は、新しいものに接したとき、過去のものや知識に照らし合わせて考えるのが自然だうことです。




みんなが「へぇー」と思うものは、ある程度知っているものの延長線上にありながら、画期的に異なっているもの。「ありそうでなかったもの」です。



従来の考え方を遠ざけ、独創性ばかりに気を取られてしまうと、誰にも受け入れてもらえない「独りよがりのクリエイティブ」になってしまいます



新しさを追い求めながらも、過去に対するリスペクトも大切であると言うことです。





知識を効率よく増やしていく3つのコツ




①王道を知る
②今、流行っているものを知る
③「共通項」や「一定のルール」がないかを考えてみる




なにか企画を考える時も、「○○の王道・定番はなにか?」と考えたり、「流行っている○○のお店に足を運んだりする」「王道や流行以外にもいろいろな○○に共通しているものは何だろう?」とするのが大切です。





「お洒落だなぁ」「センスが良いなぁ」と感じたときにするべきこと



カフェや雑貨屋さんに足を運んだ時、誰もが「お洒落だなぁ」「センスいいじゃん!」などと思うことがあると思います。



そのときに、「自分はなぜ今、お洒落だなぁと感じたんだろう?」と考える癖つけるをつけると、センスに対して敏感になると思います。



そうすることで、過去に自分が感じた「お洒落」「センスの良さ」を引き出すことが出来、それらの中にある共通項や一定のルールなどを見つけ出すことが出来るからです。



これは、誰もが出来ることであり、自分もやってみようと思いました。