日日是読日のブログ

本のご紹介、読書日記

2020年 人工知能時代 僕たちの幸せな働き方

 


2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方
2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方
かんき出版
2017-05-15




”AIが人間の仕事を奪う!?私たち人類の運命やいかに!?”




先日、電車の車内広告に掲載されていたフレーズです。



AIが人間を上回るとか、雇用がなくなるなどという、闇雲に不安を煽る、悲観的な見方が世間では広まっているようです。



私たちの生活において、今や「AI」という言葉を目にしない日はありません。



そんな中、AIは人間を「楽にさせてくれる」という見方を示しているのが本書の筆者である藤本貴教氏。



人工知能が当たり前となる近い未来に向けて、「私たちがどのように働き方を変えればいいのか」「どんなスキル・能力が必要になってくるのか」を分かりやすく解説してくれます。




目次


第1章 人工知能はどこまで進化しているのか?
第2章 1人1人はどう進化していけばよいか?


第3章 組織のリーダーはどう進化していけばよいか?
第4章 人工知能時代の新しい働き方のモデル
第5章 人間の強みを突き詰める






面白かった内容


21世紀のAI像



かつての便利は、誰かの苦労・負担で成り立っていた。



例えば、Amazonの、注文の翌日に商品が届くというのは運送会社のドライバーの犠牲の上に成り立っていた



それは、人と人とがプラスとマイナスの関係



しかし、21世紀には、その負担の一部をAIが背負う。



いわば、人とAiがプラスとマイナスの関係



AIは、私たちの仕事・生活を「楽に」してくれる存在だということ。


そして、楽になった先に、人は「新たな楽しみ」を見つけ、人生を豊かにすることが出来るのです。




まずは、AIを知る


AI時代の働き方のステップとして、AIを



①知る
②使う
③創る



があります。



皆さんは、LINEの女子高生AI、「りんな」を知っていますか?


日本マイクロソフトのAIが搭載された女子高生キャラで、誰でも友達となって気軽に雑談が交わせます。


「りんな」を「知る」という第一ステップを踏み、実際に使ってみる。


そうすることでAIに対する恐怖心を払拭できます。





なぜ銀行の融資担当者の仕事はAIに置き換えられるのか?


「10年後、AIに奪われる仕事リスト」
「あなたの仕事は危ない!?AIに奪われる仕事トップ10!」



こんなようなものを目にした人、多いと思います。



あからさまにこちらの不安を煽り、AIに対して恐怖心や不安を増幅させてしまう要因の1つとなっています。



しかしここで考えるべき大切なことが1つあると筆者は言います。



それは、「AIに仕事が奪われる」と思考停止に陥るのではなく、どんなテクノロジーによって、どのように仕事が置き換えられていくのかを自分の言葉で語れるようになること。



例えば、銀行の融資担当の仕事なら、


カメラの精度と顔認証技術というテクノロジー + 名前と顔認証が関連付けられたBIGデータ


この組み合わせにより、「この人に融資しても信用に値するだろうか?」とその人のデータをいちいち人が参照しなくても瞬時にAIによって判断できます


そのうえで、人間が、本当にその人に融資しても大丈夫かどうか判断すればいいのです。


従って、「銀行の融資担当者のは仕事」は、「なくなる」のではなく、「AIが一部を肩代わりし、人に別の仕事を与える」という変化をもたらすのです。



他の仕事においても同じです。


「AIが人間を凌駕して、人間の仕事を奪ったらどうしよう!」と漠然とした不安に駆られても仕方がありません



AIがもたらす「変化」を予想し、「働き方」や「仕事の中身」を自ら変えていくのです。





AIが苦手な領域から、人間の仕事の価値を考える



次の図の中で、AIが得意とする領域はどこでしょうか?



感覚的に分かると思いますが、左下の領域です。



AIは、「論理的に分析し、大量のデータを統計的に処理し、何度も何度も繰り返す」ことを得意としています。



逆に、AIが苦手とする領域は右上です。



つまり、


「創造的に考えることがより必要な領域」
「身体性や感性が求められる領域」


では、まだまだ人間のほうが優位であることが分かります。






より右上に近づくには、左上と右下を同時に瞬時に延ばすことは不可能です。




仮説を立てる コミュニケーター



まずは、左上から。



ここでは、目の前の出来事を当然と思わず、


「これって何か変じゃないかな?」
「そもそもこれってなんでこうなってるんだっけ?」


と疑問を持ち、問い直すことで、


「じゃあ、どうしたら良いんだろう?」


という仮説を立てることが出来ます。



問いを持ち、仮説を立てるためのエネルギーである「好奇心」にあふれている人間をめざす。そんな人間は、AIには簡単には代替されません。



AIがどんなに高速で大量の分析が出来たとしても、「何のために分析をするのか」を考えるのは人間の仕事だからです。



AIに分析させたデータから、「何を知りたいか・何を予測したいか」を考える。



これが、仮説を立てることに繋がります。



人が好き・場に安心感を与える モデレーター


そして右下。



ここでは、豊かな感性や想像力、直感を駆使して、人とコミュニケーションを図り、周囲を心地よくする雰囲気を生み出すのが上手い人が含まれます。



飛んだ発想 イノベーター



最後に、人間が目指すべき、AIと対極に位置する右上の領域です。



既成概念に囚われず、自分の感覚や発想で、今までにない新しい価値観を生み出す仕事。



ここに至るには、今の仕事で



より感性的・身体的・直感的になるにはどうすればよいか」を考えるか、


問いを立てるにはどうすればいいか」を考えていくことが実践的かつ現実的です。





トライアンドエラーでより良いものを デザイン思考



下の図は、スタンフォード大学による、イノベーションを生む思考法です。






左から右に進むもので、一言でいうと


 「現場ユーザーの想いを徹底的に深堀りし、その上でユーザーの予想を超えるプロダクトを、トライアンドエラーを繰り返しながら高速で生み出していく」というアイデア手法です。



こうして文字にするとなんだか難しそうですが、要は



会議室でいつまでも「正解探し」をするのではなく、「とりあえずアウトプットしてみて、現場の反応を感じて、手を動かしながらどんどん前に進んでいく



デザイン思考もまた、「体験することで身についていく学び」です。




Googleが発見した関係性の価値



Googleが社内の様々なデータを分析した結果分かった、社員の生産性を高めるポイント。それは



「心理的安全性」



でした。


心理的安全性がある職場とは、「自分の発言に対して、チームメンバーがそれを冷かしたり、否定したり、非難したりしないという信頼感がある」ということです。



やはりここにも、場に安心感を与えるという先述の「モデレーター」の側面が垣間見ええます。



人と人との関係性を高めることは、遠回りに見えるかもしれないが、生産性の向上チームの一体感、それによるスピードの向上をもたらし、イノベーター的発想を導きます







終わりに



人間は意思を持つ



ある人工知能ベンチャーが、「AIと人間の違い」を分かりやすく教えてくれました。



AIは、データを与えると、そのデータを鵜呑みにする。


「なぜこのデータを私に与えたのか」という理由は考えずに、ただ鵜呑みにして学習する。



しかし、人間は「なぜこのことを学べと私にいうのか?」を考えます。



この「学習する理由」を考えることを本書では「問いを立てる力」だと説明してくれました。




テクノロジーを使うからこそ、人にしか出来ないものが見えてくる



ヤマト運輸は、再配達日を教えてくれるLINEサービスを始めました。



今までは、不在通知がポストに入っているのを見て再配達以来の電話をしていたわけですが、これは電話をする側(=お客)も電話を受ける側(=ドライバー)にも負担でした。



お客の便利快適のためにドライバーがその負担を背負っていたわけです。




しかし、ヤマト運輸のLINEチャットは、荷物がいつ届くのかを事前に知らせてくれて、その時間に不在だと分かったら、チャットで時間の変更が出来ます。



これは、お客もドライバーをも「楽に」させてくれるテクノロジーです。



そして、このテクノロジーが生まれたことで、ドライバーは何をすればいいでしょうか?



どんなテクノロジーが人の仕事を変えるのかを考えることの重要性を筆者は説いていましたよね。



つまり、ドライバーのみなさんは、荷物を届ける時にハキハキと笑顔でお客さんに接すればいいのです。



「今日は暑いですね。熱中症には気を付けてください」
「お宅のワンちゃん、可愛らしいですね」



というような、気の利く一言を言えるようにすれば良いのです。




これが、「気の利く一言・ヒューマンタッチ」な「モデレーター」への第一歩となるのです。




本書で一貫して述べていたのは、



「人間が人間らしく生きることの大切さ」


でした。




人間の良い部分・悪い部分も含めて「人間らしく生きること」がこれからの時代、重要になっていくとともに、AIに対する悲観的な風潮を払拭してくれる一冊でした。