日日是読日のブログ

本のご紹介、読書日記

100円のコーラを1000円で売る方法


100円のコーラを1000円で売る方法
KADOKAWA/中経出版
2011-11-28




みなさんも一度は目にしたこと・聞いたことのある本ではないでしょうか?


10の物語で分かるマーケティングという副題から分かるように、この本はいかにして商品を売るか、顧客創造をするかについて、平易な文章である女性社員と上司の会話をメインの物語の形をとることによって分かりやすく説明してくれる。だから読みやすいし話の展開も面白いです。



面白かった点



アメリカの鉄道は、なぜ衰退したか?



当時アメリカの交通手段として主流だった鉄道は今ではタクシーやバス、飛行機に取って代わられた。その原因は何だろうか?


最大の原因は、鉄道の利用者が飛行機やバスを使い始めて客が流れて行っても鉄道会社が気にも留めなかったこと。彼らは、自分たちの仕事は“輸送事業”ではなく“鉄道事業”だと考えていた
「ウチは鉄道会社だから関係ない」と高を括っていた。
結果としてどうなったか、現在のアメリカの交通手段を見れば分かるだろう


この鉄道会社の考え方は「製品志向」と呼ばれている。


一方、自分たちを輸送事業として捉え、いち早く対策や代替案を模索する考え方を「市場志向」という。


顧客中心の考え方こそ市場志向なのだ。


本書はこの「顧客中心主義」の重要性を特に強調している。


顧客中心主義は顧客絶対主義とは異なる。
後者は「お客様の要望は絶対」という考え方であり、顧客中心主義顧客満足度を最大にすることを目的としている。


顧客満足度=顧客が感じた価値―事前期待値


つまり、客の要望にただ答えるのは顧客満足が低いと言える。


ここに、「お客様の期待・要望に応えることが一番」という考えの儚さ・危険性がある。



街の電気屋さんはなぜ潰れないのか?



価値はどこにある?


家電量販店が提供できる価値 ➡ 品揃え・低価格
街の電気屋さんが提供できる価値 ➡ 地域密着サービス
 シニア層の期待する価値 ➡ アフターサービス・利便性・適正価格


街の電気屋さんは、シニア層のニーズに近い価値を提供できることが分かる。


このように、特定の客層をターゲットにして価値を提供するのをバリュープロポジションという。
ここでのバリューは、顧客が望んでいて、競合他社が提供できない、自社が提供できる価値のこと。


バリュープロポジションの出発点は顧客。
顧客の潜在的期待を満たせる価値を考え抜くこと、そして重要なのは顧客のニーズを徹底的に絞り込むこと。
これをせずにすべてのニーズに応えようとするのは愚の骨頂。




100円のコーラを1000円で売る方法


バリューセリング


100円のコーラは「液体を売ること」が目的=プロダクトセリング
1000円のコーラは「サービスを売ること」が目的=バリューセリング


心地よい環境で、最高においしい状態のコーラ(中身は100円と変わらない)を提供する。
つまり上記の、体験というサービスを提供する。


プロダクトセリングにおいて洗練された物流網、工場、ブランドを持つ大企業に対して、大半の企業はバリューセリングでしかトップに競合できない
しかしながら日本の多くの企業はいかにコストを削って価格で勝負するかを模索してしまっている。
コストダウンを図っていかに価格を下げても、コストリーダーシップを握っているトップ企業はさらにそれを下回る価格で売れるのだから太刀打ち出来る訳がないのだ。


このように、マーケットチャレンジャーである大半の企業は「価格」を下げるのではなく「価値」を上げることに注力すべきなのだ



新商品は必ず売れない?


イノベーター理論キャズム理論


イノベーター理論とは、下の図のように顧客のタイプを新商品の登場などに対する姿勢を基に5種類に分類する考え方


商品の見込み客には大きく分て2種類のタイプが存在する。
リスク歓迎型」と「リスク重視型」だ


客の大半は新商品に対してリスク重視の姿勢を取る
つまり失敗して痛い目に逢いたくない保守型なのだ。


新商品を売る際はこの「リスク重視型」ではなく「リスク歓迎型」にいかに売り込むかを考える必要がある


彼らの購入によってメディアなどによって話題性が高まったり、認知されるようになることで「リスク重視型」にも売り込むチャンス・可能性が広がる。


図のように、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にキャズム、すなわち新商品が受け入れられるかの関門が存在する。


言い換えれば、世の中の大半の新商品は、このキャズムを超えられずに消えてなくなるのである。



あとがき  カスタマーマイオピアからの脱却


カスタマーマイオピアとは、直訳すると「お客様近視眼」


目の前のお客の意見だけを鵜呑みにして、それにすべて応えようとしてしまい、本当に顧客が必要としていることに対応できず、長期的に見てお客を失う状態のこと。


古くは江戸時代の商人、戦後は松下電器、ソニー、ホンダをはじめとした多くの企業に見られるように、「顧客中心主義」はもともと日本に深く根付いていました。そして「顧客が言うことは何でも引き受ける」という日本人の勤勉さが高度経済成長期に製造業を中心に最高の品質を生み出した
しかしその一方で、国内の過当競争を生み出し、「高品質なのに低価格」といアイロニカルな矛盾を生み出してしまった
まさに日本全体が「カスタマーマイオピア」に陥っていたのだ。


本書は、それを是正するために「顧客中心主義」への回帰をテーマにしている。


つまり、「顧客の課題に対して、自社ならではの価値を徹底的に考え、提供する」こと。




感想
これから働くうえで、非常に参考になる本だった。第2弾も楽しみだ。